語源の広場

『英語耳』松澤喜好、『日本語と英語をつなぐ』すずきひろし、『Gogengo!』角掛拓未が送る、英語の語源をさまざまな切り口でお伝えするコンテンツです。

語源の窓 第4話

2,500年前をイメージする


 ラテン語を語源とする英単語は2500年前のローマ時代とほぼ同じ意味で現在も変わらずに使われています。ただし電気もガスもなかった2500年も前の時代と現在との生活習慣の違いのために連想が難しくなっているものもあります。

 

 ぼくは、英単語の中に入っている語源が使われていたという2500年ぐらい前の時代と言葉に興味があります。「語源の広場」のメンバーの一人は1万年かそれ以上前の時代と言葉に強い関心を示しています。

f:id:gogen_wisdom:20170327003934p:plain

 

例1:exact「正確な」を語源で分解するとex(外側に)+act(動かす)です。
 これを理解するためにはローマ時代は天秤で重さを測る生活習慣があったこと
を知る必要があります。目分量ではなく天秤で測ったから「正確」なのです
。ex(外側に)+act(動かす)は重りを天秤のおもり側に釣り合うところまで
動かす動作をあらわしています。

f:id:gogen_wisdom:20170328225711j:plain

例2: dispense「分配する」はdis-(分離、分配)pense(つるす、重さを量
る)です。物や、金銀を正確に分配する時には天秤を使っていました。天秤で
つるして測って、dis-(分配)していたのです。現在はcash dispenserがお金を
分配します。生活がずいぶん変わりましたが「分配する」意味は残っていますね。


例3:candidate(立候補者)の語源のcand-は「白」です。古代ローマの候補者は
白い衣服を着て立候補活動をしたそうです。その衣服の「白」が候補者そのものを表すようになりました。

f:id:gogen_wisdom:20170329095913j:plain

 

「2500年前にはどのように使われていたのかを知りたい。」と思いませんか?

その好奇心があなたを語源から英単語をマスターすることに導いてくれます。
大型の英英、英和辞書で語源の説明を注意して見るようにしてください。
2500年前をイメージすることにより単語が長い年月を経て継承されてきたエネルギーからあなたも英語の語彙をマスターする力をもらうことができます。

 

 

語源ミニ知識


 例えば、TOP10の第3位の語源cept, cap, cip「捕える、受け入れる」からは
100個以上の英単語が作られています。

f:id:gogen_wisdom:20170327004444p:plain

 3つの英単語「concept」「receipt」「participate」は第3位の語源のラテン

語capere「捕まえる」の派生語です。

●concept「概念」はcon-(一緒に)cept(捕まえる)、つまり抽象的ないくつか
の考えを一緒につかんだ概念です。


●receipt「レシート」はre-(もとへ)cept(捕まえる)、レシートがあれば
もとの品物を取り戻すことができます。


●participate「参加する」はpart(部分)cip(捕まえる、取る)、つまり会議
の席・役割(part)を占めることです。
松澤記

 

 

あわせてどうぞ

日本語と英語をつなぐ

Gogengo!


語源の窓 第5話

続2,500年前をイメージする


2500年前のお話を続けましょう。
 dictionary(辞書)の元になったラテン語はdicere(言う、話す)でした。「書く」ことから来ているとイメージすると思いますが、書いた単語を集めたのではなかったのです。言い回しを集めたものです。だからdictation(口述)は先生が話すことを書き取るのですよ。

f:id:gogen_wisdom:20170326140032p:plain

 

 education(教育)のラテン語はducere(導き出す、引き出す)です。教育とは知識を押し付けるのではなく才能を導き出すことだったのです。またラテン語にはducare(子供を育てる)という動詞があります。どちらも1人称単数現在形はducoです。従ってeducationには「子供の才能を導き育てる」という想いがあります。

f:id:gogen_wisdom:20170328225848j:plain

 ラテン語ducere(導く)は現在もduct(ダクト)で水や空気を導いています。ローマ遺跡で石を積んで作った巨大な橋aquaeductus(ラテン語で水路)を見たことがありますか。あれは川を人が渡るためではなく、水(aquae)を渡す(duct)ためにつくった壮大な水道路です。

f:id:gogen_wisdom:20170329120017j:plain

 

missile(ミサイル)は2500年前にはありませんでしたが語源のラテン語は

mittere(送る、行かせる)です。またmissionis(送り出すことの)という
ラテン語が現在のミッション(mission)ですね。ラテン語にもmissilis
(投げ出されたもの)という単語がありました。イメージがぴったり
すぎて驚きです。

f:id:gogen_wisdom:20170328225905j:plain

現在のコンビニ(convenience store)はもちろん2500年前にはありません

でした。convenience(便利)は2500年前のラテン語では単にconvenire
(一緒に集まる)という意味でした。con(一緒に)+venire(来る)。
人や物が集まって来ているのでなにかと便利なことがそのイメージです。
現在のコンビニも人や物が集まってくるところは同じですね。

f:id:gogen_wisdom:20170326140319p:plain


以下の3つの英単語「adventure」「convenience」「invention」は、ラ
テン語venire「来る」の派生語です(残念ながらTOP10には入っていませんが)。
adventure「冒険」はad(前方に)+venire(来る)、危険が私に向かって来ること。
convenience「コンビニ、便利」は、con(一緒に)+venire(来る)。
invention「発明」はin(・・・の上に)+来る、つまり偶然に新しい物の上に来ることです。第7話では、L.venireから派生した英単語と仏単語を44個リストにしました。

gogen-wisdom.hatenablog.com

 

mini question:

次の3つの単語に共通する語源は何でしょうか?
offer、suffer、transfer

こたえは、次回の第6話にあります。
松澤

 

あわせてどうぞ

日本語と英語をつなぐ


Gogengo!


語源の窓 第6話

接頭辞も2500年前にあった


 今回は英語で重要な「接頭辞」を11個選びました。英語の接頭辞+語根という構造は2500年前のラテン語ですでに完成していました。このこと自体が驚きですが、2500年前の「接頭辞」が現在も英語に同じ意味で使われていることが更なる驚きです。

 

 このページの最後に2500年前のラテン語の接頭辞をラテン語mittere(送る)を例に17のラテン語単語で表しています。

 

 接頭辞については、語源の広場>黄金の接頭辞のところで詳しく書いていますので、そちらもご覧ください。


 前回の第5話の課題に共通する語源はferre(運ぶ)というラテン語です。
offerはof-(人の)前に+fer(どうぞと)運ぶ。

sufferはsuf-下から(重いもの、つらいこと)を支えて運ぶ様子。

transferはtrans-横切ってfer-運ぶ、です。

 f:id:gogen_wisdom:20170327005146p:plain

 以下にラテン語ferreと組み合わせて16個の接頭辞を紹介します。黄金の接頭辞(11個)よりも数は多くなっています。黄金の接頭辞はとても用使われる接頭辞を厳選しています。

 この16個の接頭辞のうちで、黄金の接頭辞11個に含まれないモノは CIRCUM, INTER, SUPER, TRANS,。黄金の接頭辞ではPREとPROを一つ、否定のIN, UN, DIS, DEをひとくくりにしたので、11個となっています。

 1) AD-/AF-(・・・の方向に)    afferent(医:神経が中枢に向かう)、
 2) CIRCUM-(・・・のまわり)    circumference(円周)、
 3) COM-/CON-(いっしょに)  conference(会議)、

 4) DE-/DI-(から離れて)     defer(譲る)
 5) DIS-(分離、反対)      differ(相違する)
 6) E-/EX-(外へ)        efferent(医:遠心性神経の)

 7) IN-(の中へ、の中に)    infer(推論する)、

 8) INTER=(の間に)      interfere(干渉する)、

 9) OB-/OF-(の前に)       offer(申し出る)

10) PER-(完全に)、     (特に派生語は見当たらず)

11) PRE-(あらかじめ)      prefer(の方を好む)、

12) PRO-(前方へ、賛成)    proffer(提供する)、

13) RE-(再び、戻って)    refer(参照する)、

14) SUB-/SUF-(下の下から)  suffer(苦しむ)、
15) SUPER-(上方に)、   (特に派生語は見当たらず)

16) TRANS-(横切って)    transfer(輸送する)

 

 接頭辞とferreの組み合わせにある医学用語afferent, efferentは近代になって取り入れたものです。またPER-, SUPER-にはferreと組み合わせた単語が見当たりませんね。


 理論的な組み合わせは 掛け算になるので16(接頭辞)x600(語根)=9600個の単語(動詞)ができることになります。さらに動詞からは名詞、形容詞、副詞が派生する可能性があるので 9600x4=38400語ができます。(理論上はね)。


 実際にはひとつの語根に対して16の接頭辞全部が使われることはないので、歯抜けになっています。それぞれの動詞ににふさわしい接頭辞が組み合わされて単語が作られているのですね。


 以下の①から⑰までがはラテン語です。『単語耳 Lv.3』P225参照。

ラテン語にはお馴染みがなくてもチラッと見てやってください。①admitto/-/-/admissum の表記は最初のadmittoがラテン語動詞の現在形の第一人称形、admissumが過去完了に相当する形です。ラテン語の活用に関しては「語源の窓」第8話をご覧ください。

 この17個は、L.mittereに接頭辞を付けた単語です。イタリア語、スペイン語、フランス語、ポルトガル語などにほぼそのままで使われています。英語以外の言葉の中にこれらが見つかると、意味が分かります。なので英語以外の言語にも興味を持っていただけると嬉しいです。

 


 以下は本の中の解説です。mitを語根に持つ単語を覚えやすいように「架空の城壁の町A」の小話にしたものです。

f:id:gogen_wisdom:20170330100636j:plain

松澤記
http://amzn.to/2nlVFbQ

f:id:gogen_wisdom:20170330102312p:plain

あわせてどうぞ

日本語と英語をつなぐ


Gogengo!