語源の広場

『英語耳』松澤喜好、『日本語と英語をつなぐ』すずきひろし、『Gogengo!』角掛拓未が送る、英語の語源をさまざまな切り口でお伝えするコンテンツです。

258 pay/peace「平和」L.pax

(28語) なんと pay「支払う」とpeace「平和」の語源は同じラテン語のL.pax「平和」なのです。

 

  pay「支払う」はL.pax「平和」からは長い年代を経て現在の「支払う」意味になっています。L.pax「平和、友好、静かさ」の動詞はL.pacare「平和にする、落ち着かせる、喜ばす」です。

 似たような動詞が L.pacere「合意する」です。L.pacareもL.pacereも一人称単数現在形は L.pacoでしたので、もともと混同されやすいのです。L.pacareにも中期ラテン語になると、「satisfy a creditor貸し手を満足させる、つまり借金を払う」意味が入ってきています。英語のpayからは16世紀には「平和、友好、静かさ」のニュアンスがなくなり、もっぱら「支払う」意味で使われています。

 「借金を払う」ことで貸し手の心を「平和に、静かに落ち着かせる」というストーリーで peaceとpayの語源の関係が語られています。

 

  仏語では、peaceとpayの発音が類似していることも注目に値します。仏語paix「平和」(発音は、ぺ) 

 payの仏語は原形がpayer、一人称の活用形は、Je(私)paie(払う)(発音は、ジュ ペ)です。

出現頻度: 高い

日本の中学生が学ぶ英単語が多いです。

単語 接頭辞 意味 語源解説
 peace    平和  
 pay    払う、支払う、支給する、引き合う(ペイする)、 ◇語源はpeaceと同じL.pax(=平和)。L.pacare(=平定する、清算する) < L.pax(=平和)  
 payment    支払い、支払額、納入、報酬、報復  



出現頻度: 中くらい

日本の高校生が学ぶ英単語が多いです。

単語 接頭辞 意味 語源解説
 pacific    平和的な、太平洋の、Pacific 太平洋  
 peaceful    平和な、平和を好む、穏やかな  
 pact    約束(和解の)、契約、協定、◇L.paciscor/ pacisci/ pacitus sum 【動】「契約を結ぶ、協定する」  
 peacekeeping    平和維持、【形】平和維持の  



出現頻度: やや低い

日本の学生が大学受験を目指す頃に学ぶ英単語です。

単語 接頭辞 意味 語源解説
 pacify    (怒りなどを)静める、なだめる、平和を回復する  
 pacifist    平和主義者  
 peacefully    穏やかに、平和的に  
 peacetime    平時、【形】平時の  
 appease    なだめる、(怒りを)和らげる、いやす ◇ad(=to)+peace  
 appeasement    緩和、鎮静、宥和政策(宥和)  
 payable    【形】支払われるべき、支払える、【名】支払勘定  
 payer    (手形などの)支払人  
 payroll    給料支払簿、従業員名簿  
 payoff    支払い、支払日、(賭けの)配当金  
 payout    (まとまった金額の)支払い金  



出現頻度: とても低い

英米の高校生レベルの語彙です。このレベルになると語彙は 15,000 語を超えます。見慣れない複雑な英単語が増えますが、よく見てみると、意外と語源のイメージを応用できます。

単語 接頭辞 意味 語源解説
 pacifier  

 調停者、なだめる人、(赤ちゃんの)おしゃぶり

 

 
 pacificate    和らげる =pacify  
 peaceable    平和を好む、穏やかな、おとなしい  
 peacemaker    調停者、仲裁者、(西部劇)ピースメーカー(ピストル)  
 peacemaking    調停の、和解の  
 payback    払い戻し、投資額の回収期間  
 payday    給料日、支払日、清算日  
 payload    有効搭載量、料金徴収荷重(飛行機、貨物車など)、直接収入を生じる荷重  
 paymaster    (官庁などの)会計係、給料支払い係  
 payee    受取人(小切手などの)