辞書のたくさんの意味の見分け方
前回で、respectはlook back(振り返る)と同じ意味のラテン語respicereが語源と説明したところ、「respect(尊敬する)とは関連がなさそう、どうして?」という質問がありましたので詳しく見てみましょう。
英英辞典、Merriam Webster's Collegiate Dictionaryは私が語源のチェックに使っている辞書です。単語の生い立ちが定義にも表れていてわかりやすいからです。
上記のWEB FREE 辞書でrespect(名詞)の定義を引いてみてください。
1. a relation or a reference to a particular thing or situation(あることや状況への言及もしくは参照)
2. an act of giving particular attention: CONSIDERATION(注視すること)
3. a: high or special regard: ESTEEM(尊敬すること)
b: the quality or state of being esteemed
とあります。
ところが、英和辞典の多くの第一義は、Merriam-webasterでは3.の「尊敬する」になっています。例えば研究社の『新英和中辞典』(2003年4月の改訂版)のrespect(名詞)の記述は「①尊敬、敬意、②尊重、重視、注意、③あいさつ、 ④点、箇所」です(これはこれで使用頻度の高い順なので学習者にとっては便利な順番ですが)。
respectを使った熟語には「見る」という語源の意味が生きています。これは「尊敬」だけでは説明できない例です。
My PC is different form yours in some respects.
(私のPCはいくつかの点[いくつかの視点]で君のPCとは違っている。)
in no respect(いかなる点でも~でない)
in every respect(あらゆる点で)
Merriam Webster'sは初めに語源が書かれていますが、語源からその単語の使われ方を調べると、目からうろこが落ちるようにその単語が発しているイメージをつかめます。
例えば、前回の単語inspect(検査する)の語源inspicereは(in-中を+specere見る)でしたね。これもMerriam Webster'sの定義を読むと語源との関連がつかめますよ。WEB版で試してください。
一番目の定義は
to view closely in critical appraisal(近くでよーく見ること、厳しく鑑定するために)
なるほど、と思いませんか!
大きな英英辞典にはたくさんの意味が書いてあって、とっつきにくいと感じられますが、今回の語源からイメージをつなげる方法で、親しみが感じられたら幸いです。
松澤記