10個の語根
「黄金の語根」は派生語が多い語根のTOP10についてのコラムで始まります。つまり、一つの語源(語根、ラテン語)から沢山の英単語が派生しているラテン語のうちでランキングのTOP10になるものです。
語根とは英単語の3つの部分の接頭辞+語根+接尾辞のうちの真ん中に位置する重要な部分です。例えば、constantly(常に)はcon+stant+lyに分解できます。conが接頭辞、stantが語根、lyが接尾辞です。conは状態「しっかりと」を表す接頭辞、stantは「立つ、立っている」動作を表す語根、lyは副詞「~に」を表す接尾辞です。
下の表は、TOP10の語根(ラテン語)からそれぞれいくつの英単語が『黄金の語根』で取り上げられているのかをまとめたものです。1029単語が10個の語根から派生しています。つまり、10個のコアとなるラテン語にこれらの単語を関連付けて覚えることで、語彙がいっきに約1,000単語になります。
ランク | ラテン語・意味 | 英語のつづり例 | 単語数 |
---|---|---|---|
1 | stare 立つ、sistere 立つ | sta sti sist | 155 |
2 | facere 作る、する | fact fect fit | 125 |
3 | capere 捕える、(受け)入れる | cept cap cip | 123 |
4 | vertere 回る、向く | vers vert | 98 |
5 | plicare 折り重ねる | pli plex | 92 |
6 | spectare よく見る | spec spect | 91 |
7 | regere まっすぐにする、指揮する | rect reg | 89 |
8 | cedere 行く | cede cess ceed | 88 |
9 | ponere 置く | pos | 86 |
10 | videre 見る | vid vis | 82 |
合計単語数 | 1029 |
次のページからは、10個の語根から派生した英単語を一つずつ紹介します。派生語が沢山あるので、一つの表にすると見にくくなってしまいました。そこで5段階の難易度でグループ分けしました。まず、ご自分にあったグループからご覧ください。
初心者の方は、出現頻度が「とても高い」グループ(中学生から高校1年生ぐらいまでに習う単語)で、ご自分が知らない単語を見つけてください。知っている単語は、意味を確認すると、その単語を新しい視点で見えてくるかもしれませんよ。語彙の豊富な方は、10個の語根に親しみながら、出現頻度が「とても低い」グループ(ページの一番下にあります)に挑戦してください。
何度もこれらのページに来ていただけると嬉しいです。
このTOP10の表を作っていると、イタリアの経済学者パレートの法則を連想しました。(経済では)全体の数値の大部分はTOPの20%の要素が影響しているという説のことです。つまり語根においても、全部の語根を一生懸命に覚えるのではなく、影響の大きいTOPにある10個~20個の語根から始めたほうが良いのです。
以下は実際にアルクに提供していた10,000語の英単語のグラフです。辞書の母数(収録語彙)は約14万語です。その中から、派生語が複数の語源を拾い出しました。横軸は派生語が多い順に語源に順番を付けたものです。100は100番目に派生語が多い語源、500は500番目に派生語が多い語源です。
縦軸は、一つの語源から派生した英単語の数です。今回のTOP10では、第1位が155単語ほどあります。このグラフよりも少し数が増えています。第10位の語源からの派生単語は82単語ほどです。1位から10位までの合計が1,000単語強になります。
このグラフではだんだんと派生単語の数が減っていることに気づきます。以下のような具合です。
1位の語源 → 155個の英単語が派生
10位の語源 → 82単語
50位の語源 → 35単語
100位の単語 → 26単語
200位の単語 → 16単語
300位の単語 → 11単語
500位の単語 → 7単語
600位の単語 → 1単語
したがって、600番目の語源を覚えても英単語を覚えるためには効果が非常に低くなります。1位から50位ぐらいまでが英語の語彙を増やすためにとても役に立つ語源です。更に100位ぐらいまでが役に立ちます。
上のグラフは、およそ14万語の辞書から選んだ600の語源から派生した10,000単語に対して描いたものです。1位から50位までの派生語を合計すると2700単語あります。
「黄金の語根」には現在(2021/3/22)では、410個の語根とそこから派生した10,100個の英単語を登録してあります。ぜひ「ブックマーク」してくださいね!!
「黄金の語根」のページは、おもに松澤が書き、すずきひろしさんが、イラストを描いています。
宣伝で恐縮ですが、松澤の『単語耳 Lv.3』(第3巻)では、TOP30までの語源から派生した800語を発音とともに覚えていただくために取り上げました。『単語耳 Lv.3』では対象としているのは、5500単語です。出現頻度では、「とても高い」「高い」「ふつう」までの単語です。5500単語のうちの800単語が30個の語源でグループ化できるので、効果的に単語を覚えることが出来ます。
参考文献:(松澤が「黄金の語根」のページの記事を書くときの参考として使っているものです。)
1、Online Etymology Dictionary
最も使わせていただいているWEB上の英語で書かれている辞書です。
印欧祖語の語源の情報は、この辞書が頼りです。
2、コウビルド英英辞典 【改訂第3版】 Collins COBUILD English Dictionary for Advanced Learners third edition 2001
取り上げた単語の使用頻度の分類の★から★★★★★をほぼすべての単語に使わせていただいています。
最近のCOBUILDからは、★から★★★★★の使用頻度の分類が無くなってしまったのが残念です。
3、英語語義語源辞典
語源がラテン語系なのか、古英語系なのかはまずこの辞典で調べています。
4、ジーニアス英和大辞典 大修館
まず語源を調べる時に使っています。電子辞書版が引きやすいので、紙よりも電子辞書を多用しています。単語の説明の最初に、語源の説明があるので、私には使いやすいです。語彙数が多いので、なんでも乗っているという信頼感があります。
5、新英和大辞典 研究社
語源の説明を調べる時に、ジーニアス英和大辞典とともに使っています。単語の最後に語源の説明があるので、電子辞書ではスクロールする必要があるために、少し使いにくいです。語彙数が多いので、なんでも乗っているという信頼感があります。
6、Cassell's Latin Dictionary
ラテン語→英語、英語→ラテン語の両方がある辞書です。英語だけで日本語はありません。ローマ時代のラテン語の語彙を調べる時に使っています。接頭辞と語根の組み合わせが当時どうなっていたか、動詞の活用形はどうなっているのかなどを調べています。
7、ニューヴィクトリーアンカー 英和辞典
古英語の語彙選定(中期、近代の英国で使われだした語彙も含む)に使っています。この辞書に出ていない単語は、なるべく古英語系の単語に選定しない方針ですが、ゆるい方針です。
8、英単語記憶術: 語源による必須6000語の征服 (ちくま文庫)
著者、岩田一男
私が大学受験生の頃に、この本により、語源の活用に目覚めました。
著者:山並陞一
印欧祖語とのラテン語派のつながり、古英語へのつながりを参考にさせて頂きました。このサイトに使う時には印欧祖語とのつながりを、上記1のOnline Etymology Dictionaryで確認しています。