語源の広場

『英語耳』松澤喜好、『日本語と英語をつなぐ』すずきひろし、『Gogengo!』角掛拓未が送る、英語の語源をさまざまな切り口でお伝えするコンテンツです。

語源の窓 第12話

語源による単語のイメージの作り方(続き)


 アルクの「英語と仲直りできる本」(*注)の中に、「単語によって、range of meaning (意味の範囲)がいろいろある」とあります。日英の単語はこの意味の範囲が一致しないために、英語学習者は大変苦労します。


 例えば「安い」と cheapは一対一に対応しない。安い本 cheap、給料が安いはcheapではなく lowを使う等です。


 英和辞典を引くと、一つの単語に2つ以上の訳があり、どれなのか困った経験があると思います。英語と日本語の意味の範囲が違う為に、英単語の使い方をカバーしようとすると沢山の日本語訳が必要になるためです。

 

実は英単語の「意味の範囲」をイメージするためには語源が強力なTOOLになります。

 

前回出題のadmit, permit, submitで確認しましょう。語源はラテン語のmittere(送る)です。

admitの意味はグランド・センチュリー英和には、他動詞では①(人を)入れる、入場を許可する。②(部屋などが)を収容できる。③事実を受け入れる、認める。

自動詞では①受け入れる余地がある。②(門が)に通じる。③認める。とあります。


admitはジーニアス大英和の分解によると、「ラテン語admittereより。ad-(…へ)+-mit(送る)=…へ送り込む→送り込むことを認める。」


語源の活用では動作をイメージすることがコツです。「身体の動作」をまずイメージします。それがだめならば、「心」「物」の動作のイメージです。


mittere(送る)では、人を送り出す、物を送る(移動する)イメージが考えられますね。2500年前を想像すると、人を送り出すことができたのは支配者です。城壁で囲まれたA町とB町がローマ時代にあったとします。


admitとはA町の支配者がA町の住人にB町に(ad-)行ってもいいよと許可を与えたり、B町の支配者がA町の住人にB町に入ってもいいよと許可する「→送り込むことを認める」イメージです。これを「部屋」に適用すると収納できる人数、「心」に適用すると、心に入れることを認める意味になります。

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permitはper-(…を通して、完全に)の意味から、A町の住人がB町を通過することをB町の支配者が許可するイメージです。admitが入ることを許可したのに対して、permitは中に入って好きなことをしてから、B町の反対側から出て行っていいよという許可です。ご自分の辞書の訳を全部調べて、admit同様にイメージと結び付けてください。

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submitはsub-(下に)が住人が支配者の前に(下に)送り出されて審判・判断されるイメージです。A町がB町に支配されたとしたら、A町はB町の下になる(sub-)わけです。電子メールでは「送信」の意味になります。

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 辞書をたよりに接頭辞と語根をイメージして関連付けることが単語のイメージのやり方のこつです。

 宿題:3つの単語compose(構成する、作曲する)deposit(貯金)propose(求婚する、提案する)に共通するイメージは何でしょうか?

答えは次の第13話にあります。

 

注*「英語と仲直りできる本」 2003/4/4初版発行、デビッド・バーカー著
松澤記

 

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