語源の広場

『英語耳』松澤喜好、『日本語と英語をつなぐ』すずきひろし、『Gogengo!』角掛拓未が送る、英語の語源をさまざまな切り口でお伝えするコンテンツです。

語源の窓 第10話

語源で知る類語のニュアンスの違い


前回出題した「advice(忠告する)」「evidence(証拠)」「video(ビデオ)」は、ラテン語videre「見る」の派生語です。

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adviseはad-(の方を)+videre(見る)です。adviseの-viseはただ見るのではなく、注意深く何度も見るイメージがあります。見て気づいたことに対して「違う違う」「こうしたほうがいいよ」と言ってあげることです。見ることから直接相手に会って忠告するイメージがあります。


evidenceはe-(外に)+videre(見える)、表面に見えて明らかな様子です。videoは動詞で、ラテン語のvidere(見る)の一人称単数形で「私は見る」という意味です。

proof(証拠)はevidenceと類語です。proofはラテン語probare(検査して良品であることを保障する)から来ています。evidenceは表に見えている段階です。いくつかのevidenceを精査して間違いの無いものにしたのがproofです。以上のように類語のイメージの違いを知るために語源が役に立ちます。

 

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adviseと類語のcaution(忠告・警告する)との違いは語源を知るとイメージできます。cautionはラテン語cavere(用心する)の過去分詞cautumから来ています。事故がおきないように安全を確保するための警告というイメージです。

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 英単語を身につけるためには、ある単語が使われている例文に沢山触れる必要があります。(1単語10回程度のめぐり合いで身につくと言われています。私の感覚も10回程度だと思います。)10回めぐりあう前に、1-2回目で語源を知り単語の因数分解をしておくと、次の8-9回の出会いがより親密になります。

 同じ単語に出会う回数が増えてくると、前後の単語との結びつきや、なぜその単語が使われるのかが感じられるようになってきます。従来の英語→日本語訳ではなかなか身につかなかった英単語が記憶に残るようになり、同時に英米人と同じイメージで単語を把握することができるので一石二鳥ですよ。


松澤

 

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語源の窓 第11話

語源による単語のイメージの作り方


「語源で英単語のイメージをつかむには初心者には慣れ・訓練が必要なようですが、何かコツがあるのですか?」という質問がよくあります。以下の3単語でイメージをつかむ練習をしましょう。

 

divert(向きを変える、気晴らしをする)を旧SPACEALCの語源辞典では以下のように書いてありました。

『divert そらす、気を紛らす(横をむくから)
[語源] di-=dis-(離れて)+L.vertere(変える、向く)
これが語源!の欄にはvert-, vort-, vers-, vors-
L.vertere = to turn(回る、変える、向く)』とありました。

 

Merriam-Websterの記述です。

Middle English, from Medieval French & Latin; Medieval French divertir, from Latin divertere to turn in opposite directions, from dis- + vertere to turn

つまり、「反対方向を向く」です。

 

DIVERSIONは名詞形です。

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 語源は動作をイメージすることがコツです。「身体の動作」をまずイメージします。それでだめなら「心」そして「物」の動作を考えます。


 語源vertereの英語訳が=to turnとありますね、まず身体の向きをぐるっと変えるイメージで始めましょう。接頭辞 di- の意味は =dis-とあるので辞書でdis- をひいてください。接頭辞は動作の方向を表します。dis- は「動詞につけて反対の動作を表す」とあります。
「向かない」とイメージすると無理があるのでdis- 「分離」の意味が使われているのかもしれないな、と見当をつけるには慣れが必要かもしれませんね。身体に当てはめると正面ではなく横または斜めを向くイメージです。

 

 ここまで見当をつけたら、辞書の意味をすべて当てはめてみます。研究社新英和中辞典では「①転換する・迂回する②(資金など)転用する③(注意を)そらす④人の気を晴らさせる」とあります。

①②は物の方向をまっすぐではなくて横に向けること③④は人の気持ちの方向を横または反対方向に向けることとイメージできるでしょうか?

 身体の向きでイメージ作りを始めますが、物や心の向きをdi- (=dis-)別の方に向けるイメージだったのでした。ここまできたら divert は物や心の向きを変える動作をイメージして脳の vert の引き出しにしまっておきましょう。


 ニュー・ヴィクトリー・アンカーにはdivertは①(注意など)をそらす②人を楽しませる、とだけあります。心の向きをそらす意味を代表してとらえていますね。まだ納得できなければ英英辞典 Merriam Websterの語源の説明には to turn in opposite directions (反対方向を向く)とあり、di-+vertのイメージが明快でしょ。

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 同様にconversationは旧SPACEALCの「語源辞典」では交わり、会話、談話、(行き来する) → 話し合う [語源] con-(共に)+L.vertere(向く)+tion = 共に向き合う。

 

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universityは大学(いくつかの学部が一つにまとまっている)
[語源] uni-(一つに)+L.versus(回る、向く)=教授と学生の共同体とあります。

ご自分の辞書をひいて、このイメージでそこに書いてあるそれぞれの訳語に当てはめてください。イメージを身につける練習のコツがつかめれば幸いです。

 

宿題: admit, permit, submitの語源は何でしょうか?
答えは次の第12話にあります。
松澤記

 

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語源の窓 第12話

語源による単語のイメージの作り方(続き)


 アルクの「英語と仲直りできる本」(*注)の中に、「単語によって、range of meaning (意味の範囲)がいろいろある」とあります。日英の単語はこの意味の範囲が一致しないために、英語学習者は大変苦労します。


 例えば「安い」と cheapは一対一に対応しない。安い本 cheap、給料が安いはcheapではなく lowを使う等です。


 英和辞典を引くと、一つの単語に2つ以上の訳があり、どれなのか困った経験があると思います。英語と日本語の意味の範囲が違う為に、英単語の使い方をカバーしようとすると沢山の日本語訳が必要になるためです。

 

実は英単語の「意味の範囲」をイメージするためには語源が強力なTOOLになります。

 

前回出題のadmit, permit, submitで確認しましょう。語源はラテン語のmittere(送る)です。

admitの意味はグランド・センチュリー英和には、他動詞では①(人を)入れる、入場を許可する。②(部屋などが)を収容できる。③事実を受け入れる、認める。

自動詞では①受け入れる余地がある。②(門が)に通じる。③認める。とあります。


admitはジーニアス大英和の分解によると、「ラテン語admittereより。ad-(…へ)+-mit(送る)=…へ送り込む→送り込むことを認める。」


語源の活用では動作をイメージすることがコツです。「身体の動作」をまずイメージします。それがだめならば、「心」「物」の動作のイメージです。


mittere(送る)では、人を送り出す、物を送る(移動する)イメージが考えられますね。2500年前を想像すると、人を送り出すことができたのは支配者です。城壁で囲まれたA町とB町がローマ時代にあったとします。


admitとはA町の支配者がA町の住人にB町に(ad-)行ってもいいよと許可を与えたり、B町の支配者がA町の住人にB町に入ってもいいよと許可する「→送り込むことを認める」イメージです。これを「部屋」に適用すると収納できる人数、「心」に適用すると、心に入れることを認める意味になります。

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permitはper-(…を通して、完全に)の意味から、A町の住人がB町を通過することをB町の支配者が許可するイメージです。admitが入ることを許可したのに対して、permitは中に入って好きなことをしてから、B町の反対側から出て行っていいよという許可です。ご自分の辞書の訳を全部調べて、admit同様にイメージと結び付けてください。

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submitはsub-(下に)が住人が支配者の前に(下に)送り出されて審判・判断されるイメージです。A町がB町に支配されたとしたら、A町はB町の下になる(sub-)わけです。電子メールでは「送信」の意味になります。

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 辞書をたよりに接頭辞と語根をイメージして関連付けることが単語のイメージのやり方のこつです。

 宿題:3つの単語compose(構成する、作曲する)deposit(貯金)propose(求婚する、提案する)に共通するイメージは何でしょうか?

答えは次の第13話にあります。

 

注*「英語と仲直りできる本」 2003/4/4初版発行、デビッド・バーカー著
松澤記

 

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