番外編:日本語とラテン語は同じ仲間?
世界の言語を語順に関して大別すると、以下の2種類があります。
(1) 語順を自由に変えられる言語。
(2) 原則的に語順が決まっている言語
ラテン語も日本語も(1)の語順が自由な言語の仲間です。英語は(2)の、語順が変わると意味が変わる言語です。語順が自由な言語は、どの単語が主語か目的語なのかがすぐわかるような仕掛けがあります。
日本語の場合には「て・に・を・は」などが付きます。
ラテン語は名詞が格変化します。
有名なラテン語「Et tu, Brute.」「ブルータス、おまえもか!」は、ローマ時代劇でシーザーが暗殺されるときにブルータスに対してさけぶことばです。信頼していたブルータスを暗殺団側にいるのをみて、落胆した叫びです。意味は、Et(and) tu(you), Brute(ブルータス よ)です。
えー、なんでBrutusとつづらないの?
ラテン語の名詞には格変化があります。Brutusの格変化は以下の6種類です。
名詞 格 意味
Brutus 主格 ブルータスは=主語
Bruti 属格 ブルータスの=所有格
Brutum 対格 ブルータスを=目的語
Bruto 奪格 ブルータスによって
Bruto 与格 ブルータスに
Brute 呼格 ブルータスよ=呼びかけ
ローマ時代の人名に「…タス」が多いのは主格を使うからです。人の名前にも格変化があるので BrutusもBruteも同じ人です。ラテン語の学習は格変化で挫折しがちですが、日本語の 「て・に・を・は」も外国人にとっては同様に難しいようです。
では、英語はどうなっているかというと、動詞に対して、主語・目的語・補語などの位置が決まっています。
例えば、
I had my car repaired. 自分が修理する。
I had repaired my car. (他人に)修理してもらう。
は、使っている単語は全く同じでも違った意味になります。位置が意味を持つところが大きなポイントです。
日本人のように、「太郎は花子に花をあげた。」「花子に太郎は花をあげた」などと自由に 主語・目的語・補語の位置を変えても「てにをは」で調整すれば意味が同じで変わらない言語を話す人には、SVOCなどの英語の語順に慣れる訓練が必要です。
Taro gave Hanako flowers.
Hanako gave Taro flowers.
では、意味が異なるからです。
単語の位置により「だれが何をどうする」を理解する感覚を身に付けることが、英語の構造をマスターすることにつながります。つまり、英語は格変化や「てにをは」を使わないで単語の位置で「格」のような働きを決めています。従って日本人やローマ人からはとっつきにくい文法の言語なのです。
英語の構造がわかりやすいmakeの使い方のコツを説明するのに、
私のお気に入りの文章を紹介しましょう。
Oh God, if you cannot make me thin, make my friends fat!
(神様、私をスリムにできないのなら、友達みんなをデブにして ください)
この文にある2つのmakeはSVOCの典型的な使い方です。英会話のコツは、このような makeなどの基本動詞を使って、言いたいことを英語の語順で言うことにつきます。
今回は、ラテン語の語源ではなく、もともとの英語つまりゲルマン語系のお話です。英語の語彙はラテン語系の語が圧倒的に多いのです。(SLV12000語の場合は69%)それでも英語が言語学ではゲルマン語に分類されているのは、ゲルマン語系のhave, make, take, give, getなどが英語の文の構成を作っているからだと思っています。
英語の中にあるゲルマン語系の単語は、中学で習う基本的な1,000単語のほとんどです。この1,000語は毎日良く使われる単語です。have, make, take, give, getなどの動詞は皆さんが、例えば英文に10,000語読んだり聞いたり(1分間に約150語のスピードで約1時間英語に触れた場合)したときにはそれぞれ100回は出てくると思われます。この数は、イメージを持っていただくためにあげました。ものすごくアバウトな数です。
英語の会話では、have, make, take, give, getなどのゲルマン語が語源の動詞を使いこなすことが重要です。これらの動詞を使いこなす(話す・聞く)ことで英会話がなめらかに進められます。これらの動詞には素早く反応できることもリスニングと速読に必須の能力です。以下は、僕がアルクに提供している「基本動詞をマスターしよう」という記事です。お時間のある時に読んでくださいね。
松澤記