古代ローマと大統領選
2016年は4年ごとの米国大統領選挙の年でしたね。意外な大統領が選ばれたので、2017年は変化の多い年になります。米国の選挙は538の票が州ごとに配分されて大統領を決める複雑なもののようです。
米国が古代ローマの投票制度を真似したからだと考えることができるそうですが。
古代ローマは約2400年前にはすでに市民集会で毎年2人の執政官(L.consul)や重要な閣僚を選んでいました。。市民集会の票はローマ市民全員ではなく兵役の有資格者の100人(L.centuria)につき1票のわりあいで地区代表がまとめていました。紀元前240年には票は373だったそうです。
古代ローマ(ラテン語) | 米国(英語) |
---|---|
元老院(senator) | 米国上院(senator) |
執政官(consul) | 領事(consul) |
専門的顧問(consultus) | 法律顧問(cousultant) |
独裁官(dictator) | 独裁者(dictator) |
100人隊(centuria) | 100年間、世紀(century) |
現役(junior) | juvenis(若い)の比較級、後輩の、年下の(junior)、若い、未熟な(juvenile) |
予備役(senior) | senex(年取った)の比較級、先任の、年上のsenior |
立候補者(candidatus) | 立候補者(candidate) |
白く純粋な(candidus) | 率直な(candid) |
2人の執政官はおもに300人の元老院(L.senator)の中から選ばれていました。ローマは一院制度です。元老院は年寄りの集まりと思われがちですが30歳以上の有力者です。
執政官が2人なのは1人だと独裁の恐れがあるためです。
このconsulは海外も含む前線に出かけたので、現在の領事(consul)と似たような役割も兼ねていました。この語は英語consultにもつながっています。
戦争でローマがいよいよ大きな危機の時には執政官が1人の独裁官(L.dictator)を任命して戦争の指揮命令権を6ヶ月間だけ委譲しました。戦況に応じた即決をさせるためなので英語のdictatorのような悪い意味はありません。
古代ローマの兵隊の現役は17から45歳でL.junior、予備役が46から60歳でL.seniorと呼ばれました。
英語のcentury(世紀)は100年という時間ではなくて、100人隊(L.centuria)
という人数が語源なのは意外です。英和中辞典にはcentury(古ローマの100人隊)が出ているのでチェックしてみてください。
古代ローマの投票日に候補者(L.candidatus)は衣服トーガを身につけて演壇にたちました。このトーガは輝くような白い(L.candidus)ものでした。
古代ローマの政治語彙がほぼもとのイメージで英語に使われていることが興味深いですね。
松澤記