語源の広場

『英語耳』松澤喜好、『日本語と英語をつなぐ』すずきひろし、『Gogengo!』角掛拓未が送る、英語の語源をさまざまな切り口でお伝えするコンテンツです。

語源の窓 第20話

古代ローマと大統領選


 2016年は4年ごとの米国大統領選挙の年でしたね。意外な大統領が選ばれたので、2017年は変化の多い年になります。米国の選挙は538の票が州ごとに配分されて大統領を決める複雑なもののようです。

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米国が古代ローマの投票制度を真似したからだと考えることができるそうですが。


 古代ローマは約2400年前にはすでに市民集会で毎年2人の執政官(L.consul)や重要な閣僚を選んでいました。。市民集会の票はローマ市民全員ではなく兵役の有資格者の100人(L.centuria)につき1票のわりあいで地区代表がまとめていました。紀元前240年には票は373だったそうです。

 

古代ローマ(ラテン語) 米国(英語)
元老院(senator) 米国上院(senator)
執政官(consul) 領事(consul)
専門的顧問(consultus) 法律顧問(cousultant)
独裁官(dictator) 独裁者(dictator)
100人隊(centuria) 100年間、世紀(century)
現役(junior) juvenis(若い)の比較級、後輩の、年下の(junior)、若い、未熟な(juvenile)
予備役(senior) senex(年取った)の比較級、先任の、年上のsenior
立候補者(candidatus) 立候補者(candidate)
白く純粋な(candidus) 率直な(candid)

 

 2人の執政官はおもに300人の元老院(L.senator)の中から選ばれていました。ローマは一院制度です。元老院は年寄りの集まりと思われがちですが30歳以上の有力者です。
執政官が2人なのは1人だと独裁の恐れがあるためです。

 このconsulは海外も含む前線に出かけたので、現在の領事(consul)と似たような役割も兼ねていました。この語は英語consultにもつながっています。

 戦争でローマがいよいよ大きな危機の時には執政官が1人の独裁官(L.dictator)を任命して戦争の指揮命令権を6ヶ月間だけ委譲しました。戦況に応じた即決をさせるためなので英語のdictatorのような悪い意味はありません。

 古代ローマの兵隊の現役は17から45歳でL.junior、予備役が46から60歳でL.seniorと呼ばれました。

 英語のcentury(世紀)は100年という時間ではなくて、100人隊(L.centuria)
という人数が語源なのは意外です。英和中辞典にはcentury(古ローマの100人隊)が出ているのでチェックしてみてください。

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 古代ローマの投票日に候補者(L.candidatus)は衣服トーガを身につけて演壇にたちました。このトーガは輝くような白い(L.candidus)ものでした。

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 古代ローマの政治語彙がほぼもとのイメージで英語に使われていることが興味深いですね。
松澤記

 

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