語源の広場

『英語耳』松澤喜好、『日本語と英語をつなぐ』すずきひろし、『Gogengo!』角掛拓未が送る、英語の語源をさまざまな切り口でお伝えするコンテンツです。

『第 2 回 語源の広場セミナー』をひらきます

このたび『語源の広場』を運営する松澤喜好、すずきひろし、角掛拓未の 3 名でセミナーをひらくことになりました。英単語をたのしく学ぶ方法を語源の観点でお話します。内容は次のとおりです。

 

『歴史からわかる英語の成り立ち;単語を語源でつなぐ』ー すずきひろし

見た目や意味が似ている英単語がたくさんあります。なぜそうなっているのかを歴史を通じて知って、興味を持って学べるようにしましょう。楽しく効率的に英単語が覚えられます。 著書やブログで使っている自作のイラストを使って説明します。第1回よりもココの内容を増やします。
『語源学習サイト「語源の広場」メイキング・ストーリー』ー 松澤喜好

英単語の習得は何年もかかる長期戦です。いすれは1万語そして2万語、その攻略のための語彙構成例を考えます。英単語は元の英語(ゲルマン語系)とラテン語系単語の二重構造です。ゲルマン語系に対しては文法の攻略法を考えます。ラテン語系の単語に対しては、個人的に語源(ラテン語系)に出会ってからの50年を振り返ります。語源学習サイト「語源の広場」をなぜ作ったか、「黄金の語根」のページの構成、使い方、裏にあるデータを語ります。英単語の全体像をながめながら、ご自分の英語学習を見直す機会にしていただければ幸いです。発表に使用するスライドのプリントは当日配布します。
『カタカナだらけのパソコン用語を語源で学んでみよう』ー 角掛拓未

スマートフォン。ウェブサイト。システム。パソコン用語はカタカナが多くてとっつきにくいです。そこでカタカナを英単語に戻して語源を追うと意味が見えてきます。変化する前の形を知ることで失われた情報を得られます。手がかりになる情報が増えると物事を考える幅が広がります。

 

発表後は 40 分ほど質問や感想を話し合う時間をもうけています。ぜひ普段の疑問をお持ち込みください。セミナーへのご参加は『こくちーず』よりお申込みいただけます。

 

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当テミナーがみなさまの学習にお役に立ちましたら嬉しく思います。引き続きよろしくお願いいたします。

語源の窓 第1話

albatrossは目からウロコ!

 

 「語源の窓」にようこそ。「語源の窓」からは「語源の広場」がよく見えます。ローマの素敵なカフェで、豊かなコーフィータイムを過ごしている自分をご想像してください。思案にふけりながら、ときどき外を見て通りがかる人々のファッションやしぐさをぼんやりとながめる至福の時間。

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 「語源の窓」というコラムは全部で24話です。今回はその第一話です。


 第一話では、私がなぜ語源に興味を持ったのかについて書かせていただきます。私の語源歴です。過去に素敵な出会いがあって、今も続いています。

 私が語源に巡り合ったのは大学受験のときです。もう約50年も前の社会全体がのんびりとした時代でした。大学受験は、団塊の世代が多く大学入学率も急に増えたために、今よりも競争率はかなり高かったです。英語は有名国立大学に入るためには10,000単語を知らなければだめだとの認識がありました。

 受験参考書の一つに「語源による必須6000語の征服」(注1)という本を使いました。この「必須6000語」が、私に目からうろこが落ちる体験をさせてくれた私の英語語源学習のルーツです。

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 「pencil, peninsula, penisこの一見まったく無関係な単語はみんな『突き出る』という語源からきている」という前書きではじまるこの本には、6000の単語が250の語源の家族に分類してあります。

 250の語源のうち約150の語根から派生した単語が約3500語、接頭辞、接尾辞、人名地名からきた単語が約2500語あります。
 それまで受験勉強でがむしゃらに英単語を記憶しようとしていた私は当時いくつかの英単語が同じイメージでつながっていることなど知りませんでした。

 

 この本から強烈に印象に残ったもう1つの例があります。
 「albatross、alps、album」です。

さてこれらに共通するイメージは何でしょうか。

 

私が語源の威力を人に説明するときには、この例を使っています。

albatrossはゴルフをやる人にはイーグルよりすごいパーマイナス3として知られています。普通の語彙としては鳥の「アホウドリ」です。
alpsは雪に覆われたアルプスの山々のイメージです。albumは写真を整理するアルバムです。何もはっていない白紙の状態です。

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 答えは「白」です。alb-、alp-というスペルはalbus「白」というラテン語が共通の語源です。

 「えー、アホウドリは何で白なの?」

アホウドリは上から見ると色がついていますが、飛んでいるところを見ると白い印象になります。


 受験生だった私は英単語を何度覚えても忘れていました。ところがこの本を読んで「白」という語源と飛んでいるときの姿が思い浮かばれるのでalbatrossは決して意味を忘れることのない単語となったのです。ゴルフとも結びついて最強の記憶が出来て私にとって目からうろこが落ちた単語です。

 あくまでも私個人の感覚ですが、私の語彙習得に対して語源を活用して
単語の意味をイメージする場合には、その語の語源を知っていた場合と知らなかった場合を比べると、3割ぐらい効率が上がっていると思います。単語の訳を見るだけよりも、単語の深いイメージを形成するために有効です。

 

  現在、定年後で自由にできる時間が増えた私は海外ドラマを平均で毎日3時間ぐらい、毎年1,000時間以上の割合で楽しんでいます。
10年ほど前までは、毎年約1万ページのペースでペーパーバックを愛読していた時期もありました。(英語の読書に関しては現在、少し復活しています。)

 

 ①海外ドラマや洋画を英語で楽しむ、②ペーパーバックを楽しむ、③CNNなどのニュースを英語で理解する。そのためには、英語学習の早い時期に語彙を10,000語に増やしておくと①②③を楽しむスタートラインに立てます。楽しみながら、語彙がしっかり身に付きますます楽しくなります。語彙の壁10,000語を越えるためには「語源」を活用することがおおいに役立ちます。

 

 「語源の窓」という僕が書いたコラムは「アルク」のホームページに10年以上掲載されていました。「アルク」のホームページからは2015年頃のリニューアルの時に外されて絶版となりました。この24話は15年ほど前に書いたオリジナルの「語源の窓」に大幅に手を加えて「語源の広場」に合う内容を目指しました。

 

松澤記

 

 

注(1) 岩田一男/光文社 KAPPA BOOKS/1967年3月1日 初版発行
一度絶版になりましたが、「ちくま文庫」から購入できるようになりました。

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あわせてどうぞ

Gogengo!


語源の窓 第2話

400個の語源(黄金の語根)からなんと10,000個の英単語


 アルファベットを使う国の人々は漢字がとても複雑に思えます。
そんな英米人にも漢字の構造を説明するとものすごく興味を示します。
もしも、外国人との英会話で話題が無くなったら、ペンと紙(Appleではだめです)を用意してたとえば以下のように木偏(きへん)を教えてみてください。

 「木はtreeの意味です。」と言いながら「木」を書きます。
「では木を2つ並べると何?」と言いながら「林」を書きます。

「?」

「これは木がいくつか生えているbush(林)です。」

「なるほど、そうなんだ!」

「では木3つは?」と言いながら「森」を書きます。

「?」

「木が沢山あるのは森、forestですよね。」と説明すると、

「うーん合理的」とものすごく感心して興味を示してくれます。

この話題が受ける可能性はとても高いので試してみてください。

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 漢字は245の部首から約10,000の漢字が出来ています。(注1)

平均すると一つの部首から40の漢字ができていることになります。
サンズイや木編、手偏などでできている漢字は平均の40漢字をはるかに超えています。

 

 外国人が一生懸命漢字を覚えたとしましょう。漢字1,000個を覚えるためには大変な努力が必要です。例えばランダムに1,000個の漢字を覚えた外国人に、後から「へん、つくり、かんむり」のことを教えたとします。「木編は木に関係する単語、サンズイは水に関係する単語、手偏は手に関係する単語などなどです。」

へん、つくり、かんむりのことを何で最初に教えてくれなかったの?」と言ってその外国人はとても怒るかもしれません。「もっと効率よく学習できたのに」と言って悔しがるかもしれません。学習していく途中で「へん、つくり、かんむり」の存在に気付いてはいくと思われますが、最初か適当な時期に教えてもらうと学習の効率があがります。

 

 スペースアルクに僕が15年間(無償で)提供していたページに「語源辞典」がありました。「語源辞典」には約10,000語を登録してありました。単語を入力すると、同じ語源の単語がズラーっと出てきます。その語源は約600語ですので、600の語源から10,000語が派生した様子を見ることが出来ました。600語は語根です。接頭辞・接尾辞は600語に含んでいません。語源というと難しいと感じられますが、漢字の偏のようなものと考えてください。この「語源辞典」は2015年ごろのリニューアルの時に削除されました。何らかの形でこの「語源の広場」に復活させたいと考えています。【語源ランキングTOP10】のページは「語源辞典」の形を変えたものです。

 

  ●2021年3月25日現在は、「黄金の語根」には、400を超えた語根をリストしてあります。派生した単語は10,000語を越えています。つまり、400個のラテン語を知ると、10,000語の英単語を関連付けて記憶できます。

 

 僕の個人的な想像ですが、漢字もラテン語も20,000年ぐらい??前に数百の基本的な概念から出発してだんだんと複雑に語彙を増やしていったと考えられます。英単語を征服するぞーと鉢巻をして10,000語をランダムに覚えようとしても無謀です。基本的な概念に戻って、その派生していった様子を追いながらグループで関連づけて学習するほうが長く記憶に残ります。

 基本的な概念という視点から漢字の部首と英語の語源(ラテン語)を比較すると面白いことに気がつきます。

 

 漢字の部首は自然界にあるものと体の部分です。

例:木、水、草、月、日、火、土、目、口、人、手、心

 

 漢字に対してラテン語の語源は動作です。(注2)
例:立つ、作る、捕まえる、重ねる、回す、見る、支配する、置く、する、行く。


 カルチャーの違いが出ていると思いませんか。語源の違いからしても、漢字は農耕民族、ラテン語は狩猟民族と言えるかもしれません。

 

 【語源ランキングTOP10】のページではsta-,-sti-,stat, sist-というスペルを持つ単語の語源がランキングの第一位になっています。ではその単語の例を挙げてみましょう。語源はラテン語のstare「立つ」です。

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●assistant「アシスタント」はas-(側に)sist-(立つ)-ant(人)つまり
そばに立って世話をする人のこと。

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●instant 「即座の」はin-(中に、そこに)sta-(立って)-(a)nt(いる)、
つまり部屋の中などで待機して待っている状態です。即座に行動に移れる状態です。
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●station 「駅」はsta-(立つ)-(a)tion(状態、結果)つまり立って待つ

ように決められた場所、「馬車の駅」という意味です。「部署」という
意味もあります。

 


注(1)角川新字源改訂版/角川書店/1994年11月10日改訂版初版
注(2)語源が「動作」を表している動詞でできていることは【語源ランキン
グTOP10】を参考にご覧下さい。
松澤記

 

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